嫉妬深くて何が悪い。

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   皆様と同じように苦楽を共にし、青春を駆け。そんな時間を生きて来られたらどんなに良かったかとつくづく思う。もしも生き直せるものなら、いっそ日本人に生まれて来たい。侍としてお側で、岳親分のように町から、どんな形でだって、旦那様の治めたこの町に生まれ直したい。 「フォール先生は本当に直向きですねぇ」 「そのように映りますか……」  この心の中は、いつもざわざわと落ち着かない。せめて、どうにかして旦那様や皆様のお役に立ちたいとそれだけで。志弦様がお隠れになって以降、学院にも居場所を失くし、旦那様のお側に仕える以外の道はなく。みっともなく縋り付いているばかりではないかと不安で…… 「大きな声では申せませんが、縋り付いているのは旦那様の方ですよ」 「こら岳」  悪戯めいて笑い合うお二人は、やがて揃って「旦那様の事を頼んだ」と繰り返した。 「我らのような旧い者には決して叶えられない……旦那様の人生は其方が見届けるのだよ」  旦那様もそのように仰った。童のように泣いて、決して自分より先に死んではならない、自分を見届けてくれなければ許さないと怒ってしまわれた。  
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