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和鶴を亡くして十年近く、志弦を亡くした後は桐吾が側にいても一年以上、桐吾を失くすと今度は二年以上……私はたぶん情を交わさずとも生きられる性質なんだろう。いや、やはり単に年なのかも……
ただ、どんな時も気持ちのない相手に手を出した事は一度もない。眠れぬ夜に売って貰ったのは温もりだけだ。でもまぁ……それでも気に入らぬものはもう仕方がない。そもそも一晩色を買って何があろうとなかろうと、証明する手立てなどないものだろうしな。
「怒ってしまわれたのですか……」
「怒っているのは貴方ばかりだよ」
どんなに機嫌を取ろうとも、収まらぬ矛先から逃れる術がない事もこの年になると解って来るもので。じっと堪えて受け容れるのみ。朝になれば少しは落ち着こう。
「目を開けて!俺の事ちゃんと見て!」
ぱっちり目が開いた。と同時に両手で頬を包まれ唇が降って来て、息も出来なくなるくらいに絡め取られた。柔らかく熱く……どこまでも甘い。成る程。つい地が出て恥ずかしくなったのだな。
夜着の裾を割って手を滑り込ませ脚を撫でると、ジェイムズの体がぴくりと震えた。は───何と滑らかで気持ちのよい太もも……!
漸く離れた唇から微かに漏れる息まで甘い。情を交わさず生きられる性質など綺麗に飛んで行ってしまった。年も関係ない。
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