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線路は続くよどこまでも
その歌詞を聞いた日
ぼくは恐怖した
どこまでもまっすぐにのびる線路
遠く離れるほど一点に収斂して
地と空の間に飲み込まれていく
その上を永遠に走り続ける列車
どこへもたどり着かないと分かっていても
前へ前へと進むかしかない
途中下車すれば二度とは乗れない
なまじ先があるせいで
ここでよかったのかと迷い惑い後悔す
去り行く列車を怨めしく
見遣る人々の目に足下は映らない
だけどぼくが恐れたのは
はじめから乗り遅れたという事実
誰もが器用に吸い込まれる始発駅
ぼくは中に入れずに
うねる人群を呆然と眺めていた
同じ平面にいながら同じ空間にいない
気付くと独り沿線をとぼとぼ歩いている
列車は愛想も未練も遺さずに
器用な人々を乗せて過ぎ去って行く
どこまでもどこまでも
永遠という言葉を浮かべるとき
ぼくの胸は激しく揺れる
線路の誘う永遠の
どこにも終わらぬ確かな道のり
確かな線路に別れを告げて
不確かな泥濘を歩くとぼくは決めた
脚を奪う泥の重さも
泥水に濡れて踏むたびに
土蛙のように鳴く靴も
大気を充たす諦めの臭いも
自ら望むなら意味を持つ
この先にどんな未来があろうとも
それを引き受けるとぼくは決めた
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