第一章 桜もえたちて

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第一章 桜もえたちて

序章  地の果てより差し込む一筋の光が夜の終わりをつげ、広大な大地を優しく照らしていた。  鳥は空を自由に飛び交い、動物たちは野山を駆け巡る。  地や山に生える草木はありのままの姿を広げており、自然界にある人という生命が未だ小さな存在であることを伝えていた。  山を巡る川の流れや、大気を抜ける風、地を照らす光、それらすべての自然は神の御業と信じ、姿形(すがたかたち)を持たぬ神々と自然は同義であると考えられ、生活の中に溶け込み共存していた。  自然による様々な恩恵によって豊かな生活を営む一方で、時に見せる嵐や、地震、火山といった現象は人々に恐れを抱かせ、それらに感謝や敬いの気持ちと同時に畏怖(いふ)の念も心に抱くようになっていった。  神々へ抱くそれらの思いは祈りによって神と繋がり、怒りを収めることで恩恵を受けることができると考えられ、それにより恐怖や不安といった思いを忘却する事で心の拠り所とし、重圧や心労といったものから開放されることで人々は安定した生活を育んでいるのであった。
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