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「え……昴流?」
思わず声を掛けた瞬間、芽生は赤くなって俯いた。
「ごめんなさい、人違いです……」
彼がこの場にいるわけはないのに、似た面影の男性を見て声を抑えられなかった。顔が赤いままの芽生に男性は、微かに困惑した笑みを浮かべながら挨拶してきた。
「はじめまして、神流と申します」
(声が……)
当たり前だけど、男性の声は昴流とはまったく違っていた。聴こえる声は掠れて、この場に似合った艶やかさを芽生にも感じさせた。
男性の差しだした名刺を受け取ると、芽生は文字を見た。凝った装飾の名刺で、同じように凝った文字で店名と男性の名前-源氏名が書かれていた。
「神流さん……」
つぶやくような芽生に、一緒に来たアルバイト先の女性が笑った。
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