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下着をつけてから、脱衣所に行って湿った服を着ると、そのまま芽生は玄関を出た。オートロックのマンションのようで、出ると自動で鍵が掛かった。
エレベーターで一階まで降りてから芽生は時間を確認した。思ったよりも遅くなかった。永遠と思うような時間だったけど、時計は芽生の感覚を否定した。
外に出ると雨はやんでいて、雲の切れ間から星が瞬いていた。嵐の時間は去ったのだと分かった。
芽生はタクシーに乗った。近距離だったけど、芽生は歩くのも辛かった。ドライバーは嫌な顔もしないで自宅まで届けてくれた。
気を抜くと膝から崩れそうになる身体を引きずって、芽生は階段を昇り、自分の部屋へ入った。ベッドに倒れ込むとバッグが床に落ちた。中から科学館土産の小さなプラネタリウムが転がった。神流が買ってくれたものだ。
(見るなんてできない……)
泣きながら芽生は、初恋と二度目の恋が残酷な形で終わったと知った。
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