第三章 求められる覚悟~決意の証明

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 「シャワー待ってたら雷が光って動けなくなったんだ。思い出して。  大丈夫、今は家の中だ。何も怖いことはないって自分に言い聞かせてたんだ。  何回も深呼吸してる時に、芽生が入ってきて……  ごめん。その時、芽生を離したくない。そのまま(つか)んでればいいんだって。ほんと最低な考えだよ……」  抵抗して懇願(こんがん)する芽生を昴流は無理に抱いた。  その時にもし、昴流が落ちついた後だったら新しい生命は宿らずに、二人の空白の時間もなかったはず。  芽生も、あの時間に戻りたいと思ったけど言えなかった。二人の子供がおなかにいる。望んだ子供ではなかったけど、芽生は愛情を感じ始めている。存在を否定することは言えない。  「もう、これで俺だけのものだって変な安心したんだ。つい寝て……目が()めた時、一瞬、芽生がいたことは夢かって思ったよ」  昴流の口調は、そうであってほしかったと聞こえた。  「でも、すぐに思い出した。自分がどれだけ芽生にひどいことしたか。いなくなりたかった。自分のしたことが信じられなかった……」  話す昴流の瞳は(うる)んでいた。彼の、決して消えない後悔が芽生にも伝わった。  「謝りたかった。(ゆる)してくれないと思ったけど、それでも謝るしか俺には思い浮かばなかった。  芽生を離したくなかったのに……やっと作った関係を自分で壊した。どうやって(つぐな)ったら赦してもらえるだろうって、その日はずっと考えたよ。  でも、店を休むことはできない。自分が悪いんだから。そしたら……」
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