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冬夜は、その日、弥生が店に押しかけて神流を殴ったと言った。そのことだと分かった。
「弥生の件でしょ。
冬夜さんに聞いた。びっくりした。弥生、全然、言ってなかったから。
私、大学休んだから、弥生、心配して来てくれたんだ。話さないでいられなかったの、やっぱり苦しかったから……
そんなことになるなんて思わなかった。ごめんね、無関係の人に話して」
芽生の言葉に昴流は首を振った。
「自業自得だ。
自分でも、やったことに吐き気がするほどなんだから、当然のことだ」
言った後、昴流は芽生を初めて正面から見てきた。その時、気づいた。彼の瞳は変わっていない。濃い、綺麗な茶色の瞳。どうして、すぐに思い出さなかったのか……
「だから聞いて驚いた。出来た子供産むなんて信じられないって。
普通なら、すぐに堕ろすに決まってるから。芽生には申し訳ないけど、嬉しいって思ったよ」
昴流は、子供の存在を嬉しいと思っている。意外に感じた。彼にとっても想定外の妊娠のはずなのに……
「こんな形で妊娠させて本当にごめん。
養育費払わせてくれ。芽生が、安心して子供育てられる金額払えるように頑張るから」
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