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二人は、この日はそのまま別れた。
急にいろいろなことを決められない。まして、二人のこれからのことだから、余計に慎重に考えないとならない。
昴流は芽生をタクシーに乗せて、料金を払った。
「いいよ。自分で払うから」
遠慮する芽生に昴流は強引に押してきた。彼を中学三年生の時から知っているけど、初めての態度だった。
「いいから。払わせてくれ」
言って、タクシーのドライバーに数枚の紙幣を渡すと、芽生の家の住所を告げた。神流なら知らないはずだったけど、昴流なら当然知っている。
タクシーが走りだして、芽生は後ろを向いた。さっきと同じ場所で、昴流は彼女を見送っていた。
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