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その日の夜、両親はきちんと早く帰ってきた。夕食の後、リビングで二人は芽生の向かいに座った。
「実は……子供の父親のことなんだけど……」
両親の答えを聞く前に芽生は先に話しかけていた。
「父親?」
「うん。あの……昴流……中村昴流なの」
父親は分からないようだけど、母親は誰か分かったようだ。
「まさか、中村さんの息子さん?」
芽生は頷いた。どんな反応をするか怖かったけど、母親は意外なことを言ってきた。
「中村くん、この街にいたんだ。お母さん、すごく心配されてたのよ」
「え、どうして、昴流のお母さんを知ってるの?」
子供同士は同級生だけど、働いている芽生の母親に対して、昴流の母親は専業主婦だ。
「時々会うわよ。買い物とかで。お母さんもいろいろ聞いてるから心配だったのよね」
それほど近所ではないけど、離れているほどでもない。確かに、行く店が同じでも不思議ではない。
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