萌葱

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翌日、龍大と聖は札幌観光に繰り出した。 俺もまだそんなに詳しくはないけど、市内なら案内しようか?と陽太に言われたものの、どうやら昨晩はとても情熱的な夜だったらしく、腰を庇うようにして動いているひとを歩き回らせるのはな、と思った龍大は、丁重に断った。 まあ、二人きりでデートを楽しみたい、という願望もあったのであるが。 昨夜の、鷹城がオリブルの曲を作曲しているのかも?という疑惑については、なんでそんな話になったのかというところを説明しなくちゃならなくなるかと思って、結局まだ話していない。 ピアノを弾いて聴かせるときに、その話もしてみよう、と思っていた。 それはさておき、ベタな時計台から赤レンガ庁舎、円山動物園、白い恋人ミュージアムなどなど、名所を巡って満喫しまくった二人だ。 昨日、寝落ちるようにして爆睡したおかげか、聖がとっても元気で楽しそうにはしゃいでいるのを見て、龍大はそれだけで自分もめちゃくちゃ楽しいな、と思った。 最後は藻岩山ロープウェイに乗って、札幌の夜景を眺めて。 龍大はこっそり、他の観光客の目を掠めてキスぐらいできるかな?とドキドキしていたのだけれども、残念ながらそうはならず。 それでも、楽しかったからまあいいか、と二人は、鷹城と陽太のマンションに帰ってきた。 札幌ラーメンを堪能したりして、少し遅くなってしまったので、滞在してる間はこれ使って、と渡されていた合鍵で部屋に戻る。 明日はバイクで少し遠出しよう、と話しながら、玄関のドアを開ける。 廊下の突き当たり、リビングのほうから灯りが漏れていたから、まだ起きているんだ、と二人はそのままリビングに向かったのだけれども。 薄く開いたドアの向こうから聞こえてきた声に、龍大は咄嗟に聖の前に庇うように立ちはだかった。
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