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「つうか、鷹城さんて何してるひとなん?」
スゲーとこ住んでんな、陽太。
鷹城と陽太の住んでいるマンションに案内され、龍大は目を丸くした。
そういう龍大だって、実家は都内の一等地にある広大な敷地の「お屋敷」なのだが。
鷹城とは家が近所で知り合って、高校のときから付き合っている、と道すがら軽く聞いていた。
ということは、ここが自宅というわけではなく、自宅は東京にあるということで。
つまり、言うならばここは、陽太のために用意したセカンドハウス的なものということだ。
セカンドハウスでこのゴージャスさだ。
そういうところをポン、と用意できるだけの経済力がある上に、そもそも陽太の進学先に合わせて居住地を移せるということ自体がもう、当然、普通のサラリーマンではないと思われる。
見たところ、かなり若そうなのに。
というか、この容姿で普通に会社勤めしている姿とか想像できないし。
訊かれて、陽太は少し困ったように鷹城のほうを見た。
見られた鷹城は、ニッコリ笑う。
「投資を少し、な」
後、まあ、クリエイティブなお仕事も少々だ。
「こっちのゲストルームを好きに使っていいから」
さらりと話題を変えられたところを見ると、あまり職業について詮索されたくないのかもしれない。
まあ、龍大も実家の生業については突っ込まれたくないので、人にはいろんな事情があるのはよくわかっている。
そんなことを考えていたら、不意打ちのように続いた言葉に激しくむせることになった。
「ゲストルーム専用の浴室もついてるから、好きなだけイチャコラしていいからな?」
ウチはそれぞれの部屋の防音も完璧だし。
「サイドテーブルの引出しの中身も勝手に使っていい」
ゴムとローションが入ってるから。
ゲホンゲホン、と派手に咳き込んだ龍大に、鷹城は不思議そうな顔をする。
「君らも恋人同士なんじゃねえの?せっかくの旅行なんだし、他人んちだからって遠慮することはないからな?」
俺も遠慮しないから、お互い様でよろしく。
言いながら彼は、聖にバスルームの使い方を簡単に説明している陽太をうっとり眺めている。
「つか、あの二人、仔犬二匹がじゃれてるみたいでマジ癒される…あー、可愛い」
その意見には激しく同意だな、と思った龍大だった。
そして、どうやらこの北海道旅行は、思ったよりも刺激的なものになりそうな予感がする。
「じゃあ、今日は長旅お疲れ」
説明を終えて、陽太がそう言って立ち上がった。
「この部屋のものは好きに使っていいから。後、キッチンの冷蔵庫の中身も遠慮なく飲んだり食べたりしてな?」
一応、この部屋にも冷蔵庫は置いてるけど、飲み物ぐらいでたいしたものは入ってないから。
「基本、どこでも自由に使っていいけどな、夜は主寝室はあんまり覗くなよ?」
ニヤニヤと鷹城が補足する。
「俺は構わないけど、陽太が恥ずかしがるからな」
恥ずかしがる陽太も可愛いけど、そーゆー可愛い陽太は独り占めしたいし。
「鷹城さんっ!」
熟れたトマトのように真っ赤になった陽太が、恋人の胸をポカポカと殴る。
その拳を軽く受け止めて、鷹城は龍大に意味深なウインクを投げてきた。
「行き詰まって見学したいんなら、ちょっとぐらいは見せてやってもいいけど?」
龍大は、思わず聖のほうを流し見た。
聖は、きょとんとしている。
言われている意味をわかっているのかいないのか、よくわからない。
「I can't wait to get you alone」
突然、鷹城が流暢な英語で何事かを陽太に向かって囁いた。
「Let me get inside you」
そして、ひょい、と陽太を軽い荷物のように抱きかかえると、もう一度龍大に向かってバチンとウインクして、ゲストルームから出て行ってしまった。
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