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「鷹城さんて、なんか凄いインパクトのひとだな」
二人きりになった途端に静かになった部屋で、なんとなく落ち着かない気分になって、龍大はそう言って、聖に笑いかけた。
龍大が大学の側に部屋を借りて一人暮らしを初めて以来、部屋には常に聖も入り浸っていたから、何もこういう二人きりのシチュエーションは珍しくないどころか、いつもどおりのはずなのに。
実際、落ち着かないのは龍大だけで、聖はいつもどおりだ。
「俺、風呂入ってきちゃうな」
さっきお湯の張り方教えて貰って、ついでに沸かしちゃったから、そろそろ入れると思うんだ。
「今日めっちゃ汗かいたし、お先!」
「お、おう…」
さっさと浴室に入って行ってしまった聖を見送って、手持ち無沙汰になった龍大は、何か飲もうとベッドの脇に備え付けてある小型の冷蔵庫を開けた。
というか、ここはホントに人の家なのか。
まるで気の利いたホテルのようだ。
ミネラルウォーターや炭酸水、スポーツドリンク系の飲み物なんかがズラリと揃っている。
未成年であることを考慮したのだろう、アルコール類は入っていない。
龍大は、炭酸水を開けてグビグビ飲んだ。
まだ初日だ。
しかも、いくら走るのが好きだとは言え、早朝からずっとバイクに跨がって運転してきたのだ。
日頃からかなり鍛えている龍大でもそれなりに疲労を感じている。
小柄な聖はもっと疲れているはずだ。
盛るな、俺。
落ち着け。
適度な疲労感が逆に変な高ぶりを誘発するのか、股間がどうにも落ち着かない。
大きくため息をついて、龍大は立ち上がった。
最初に通して貰ったリビングに、大きなグランドピアノが置いてあったのを思い出す。
陽太が弾けるという話は聞いたことがないから、あの規格外なイケメン鷹城が弾くのだろうか。
クリエイティブな仕事、というのは、音楽関係なのか?
少しだけ、あれに触らせて貰おう。
ピアノを弾けば、無心になれるかもしれない。
龍大は、ゲストルームを出た。
廊下に出てしまってから、ハッと思い当たる。
さっきのあの様子じゃあ、今頃陽太と鷹城はイチャイチャの真っ最中なんじゃ…。
さすがに友達の喘ぎ声を聞いてしまうのは申し訳ない気がする。
つうか、陽太も聖に負けじ劣らじの小柄な体躯なのに、あんなデカイ男とヤって身体大丈夫なんだろうか。
しかし、廊下は静かなものだ。
鷹城が、ウチは防音は完璧だから、と言っていたけれども、確かに各部屋のドアは、上品にカモフラージュされているものの、よく見れば防音仕様になっているっぽい。
普段は二人で住んでるわけで、そこまで防音に拘る必要はないのだろうから、リビングのグランドピアノといい、やはり鷹城が何か音楽関係の仕事をしているからだと考えるのが間違いなさそうだ。
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