ツバメファミリーの恩返し

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ツバメファミリーの恩返し

 兎耳山動物病院に一時的ではあるが、出入り禁止を食らった尚季は、ログハウスの管理を含めて、住居もそちらに移ることになった。  動物病院の二階にある部屋から荷物を運び出している時に、ふと姉の冷たい仕打ちに腹が立って、無性に仕返しがしたくなる。  本当は、父母の死にショックを受けて、上の空になり、預かった動物にクスリを与えるのを忘れそうになったり、戻すケージを間違えて、小さなケージに大きな動物を押し込もうとした自分が悪いと分かっているのだけれど、同じ痛手を負っても表面上びくともしない姉の瑞希が憎らしくもなる。  そっと瑞希の部屋を覗いてみると、枕元に放り投げた本が目に付いた。  手に取ってみると、なんと表紙に、犬だか狼だかしれない尖った耳を頭上につけた男と、たぬきだかくまだか分からない丸い耳を頭につけたかわいい男の子が抱き合っている絵が載っていた。 「これって、BLって奴か? 」  興味本位でパラパラとページをめくると、尖った耳は狼男の子孫で、丸い耳はたぬきに変身できる獣人で、二人は森で出会って恋に落ちるという話らしい。 「ありえね~~~」  
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