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額を片手で覆って呟くと、しまうついでに、最後までページを斜め読みしていたら、狼男がタヌキ男子に覆いかぶさっているイラストを見つけ、思わずページをめくる手を止める。
『食ってやる』というセリフを読んだ途端、尚季はガハガハと笑い転げた。
「狼がたぬき食う? そのまんまじゃん! ひゃっは、はははは」
なんだこれ? どんなコメディー!? 尚季はおかしくて、おかしくて腹がよじれるほど笑い、瑞希へ仕返ししようという気持ちは、跡形もなく消え去った。
久しぶりに笑ったかもしれないと、気分も爽快になり、ログハウスへの引っ越しもサクサクと進む。新居の2階を片付けてから、ウッドデッキで一服しようと、尚季がコーヒーカップを持ってガーデンチェアーに座ると、ピキーッ、ピキーッという甲高い鳴き声と共に、黒い物体が目の前を横切った
「うわっ、びっくりした! 何だ、ツバメかよ。脅かさないでくれ」
ひょっとして巣でもあって、警戒しているのかもしれないと思った尚季がウッドデッキを覆う屋根を見ると、扇状の土の塊とその巣の下に糞除けの板を見つけた。
ああ、やっぱり巣があると、じっと見ていると、親鳥が飛んできて巣に足をかける。すると、6つの黒い塊がにょきっと巣から突き出て、ヒューヒューと鳴いた。
「ヒナがいる! へぇ~っ、ちっこいな。あっ、でも大きさが違う」
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