願いが叶う石

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 ちびすけは、尚季の頭に向かって差し出された玲香の手を、前のめりになって覗き込んだが、決心がつかないのか、耳と耳の間をテケテケと歩く。 そして、思い切ったように、玲香の手に飛び乗った。 「きゃ~~~っ!かわいい~~~っ。うちの子にしたい」  玲香がちびすけを手に載せたまま、社務所の中を歩き出すと、尚季の耳が引っ張られてバランスを崩し、歌舞伎役者の六法のように、片脚けんけんで玲香のあとを追っていく。 「何やってるの?」  玲香が立ち止まって、胡散臭そうな目で尚季を見ると、尚季がうさ耳を抑えて不機嫌そうな顔で、ちびすけに聞いてくれと言い返した。  ちびすけは玲香の手から尚季の頭へと飛んでいき、またうさ耳に包まった。どうやらそこがお気に入りの場所になったらしい。 「このうさ耳は僕の魂のかけらなの。僕動く、うさ耳ついてキュル」  なるほどね~と尚季は感心しかけて、感心している場合ではないと気が付いた。 霊感が強い者がみたら、ちびすけもうさ耳も見えてしまうことになるから、いつも帽子で隠していなければならない。帽子をかぶって映画館やライブなどに行けば、邪魔だからと注意されるだろうから、行くこともできない。つまり公共の場所に出るには常に注意が必要になるのだ。
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