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最初は警戒して鳴いたツバメの親たちは、尚季がヒナを襲ったりしないと分かったのか、尚季がウッドデッキに姿を見せても、警戒音を発することはなくなった。
そして10日ほど経った時、親ツバメの慌ただしい鳴き声に起こされ、尚季が2階の寝室のカーテンを開けると、電柱からログハウスまでの引き込み電線に、ツバメが7羽止まっている。
「あれっ? あいつらだよな? もう巣立ったのか、早いな」
尚季が着替えてリビングの掃き出し窓を開けて、ウッドデッキに出ると、巣の縁につかまって、下を覗き込んでいるちびすけがいる。
親や兄弟たちが羽を広げて、ここまでおいでと鳴き声をあげる。ちびすけが羽ばたきの練習を繰り返すが、尚季は片方の羽がおかしいことに気が付いた。
「少し縮れているんじゃないか? 」
でも、動物にはそんな違いは分からない。親鳥が電線から飛び立って、ちびすけの近くまで飛んでいく。掠りそうなところで旋回すると、ちびすけが置いていかないでと鳴き声をあげる。電線を見上げたちびすけは、意を決したように、よっこらしょと巣から飛び降りた。
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