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懸命に羽ばたきをするちびすけを見て、尚季は飛べ! 飛んでくれ! と必死で祈る。
願いも虚しく、ちびすけはウッドデッキに着地した。
着地したヒナは身が竦んで動けないらしく、親鳥が餌をせっせと運んでは元気づけて、飛ばせようとする。
「今ごろ食べさせてんじゃねぇよ。栄養不足で羽が育ってないじゃないか」
尚季は、このヒナが空を飛ぶことはないのを知っていた。獣医の免許があってもこの羽は治せない。親鳥が一生懸命に餌をやる姿を正視できず、尚季は掃き出し窓を閉めて、リビングに引っ込んだ。
しばらくすると、親鳥が警戒する鳴き声を上げ、窓の付近を何度も往復するのが見えた。
まるで尚季に助けを求めるように、窓の中を覗きながらとんでいる。
「ちびすけに何かあったのか? 」
尚季は窓にぶつかるほどのスピードで走り、サッシに手をついて身体を止めると、すぐに窓をスライドさせた。
目の前にフリーズしたちびすけと、間合いを詰めて、今にも飛びかかろうとしている数匹の猫がいる。
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