ツバメファミリーの恩返し

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 ドクンと心臓が跳ねて、尚季はハッと息を飲んだ。大声で叫んでも猫はびくともしない。 やめろ~! 食べるんじゃない! と尚季は叫びながら、片手をブンブン回して、猫たちに突っかかっていった。  尚季の勢いに押されて猫たちは逃げて行ったが、ちびすけはぶるぶる震えている。ここに置いておいたら、近くで見張っているだろう猫の餌食になるのは目に見えていた。  尚季はウッドデッキの横に設えたシェルフから、ガーデンの手入れようの軍手を取り出してはめると、ちびすけの前に差し出した。 「人間の匂いをつけると、親鳥が餌をやらなくなるからな。ほら、怖くないから軍手の上においで」  優しく声をかけると、ちびすけがつぶらな瞳で尚季を見上げる。  ズキューン! あまりの無垢でかわいい姿に胸を撃ち抜かれ、尚季はぷるっと身震いした。  猫からヒナを救った尚季を信頼しているのか、親鳥はヒナに手を出す尚季に何も言わず、電線から見守っている。  ちびすけは猫に食べられそうになって力が抜けたのか、尚季が軍手をはめた手を近づけて足に触れても、逃げることもできなかった。
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