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翌朝になるとちびすけは巣から羽ばたいて着地する。待っていましたとばかりに猫がやってきて、親鳥の呼び声で尚季が追い払う。そんなことが何日続いただろう。
ピキ―ッ ピキ―ッと鳴きながら2階の窓の中まで覗いて、ちびすけの危険を知らせた親鳥たちの声が聞こえなくなった。
そして、電線のちびすけの兄弟たちの姿も消えていた。
飛べないはずと分かっていても、姿が見えなくなったことをいいことに、きっと巣立ってみんなで飛ぶ練習をしているんだと、尚季は思うことにした。
瑞希は午後にまでまたがる動物病院の診察が終わると、尚季の顔をログハウスまで覗きに来ることがある。
そろそろ戻ってくると聞かれて、尚季は夏の間考えていた案を瑞希に話してみた。
「このログハウスをペットに解放して、ただのペットホテルではない何かを作りたいと思うんだけれど、いいかな? 」
瑞希は、弟の心の回復を喜んで、いつでも相談してと言ってから、もちろん病院に戻ってもいいからねと伝えると、隣の家に帰っていった。
案がまとまりかけたころ、あの懐かしいツバメの声を聞き、急いで掃き出し窓を開けて見ると、電線に7羽のツバメが止まっていた。
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