怪しい教祖

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怪しい教祖

 玲香が[王様の耳]にやって来たのは、2日後の金曜日で、ペットサロンに着くなり、興味深い話を尚季に話し始めた。 「神社の氏子に、女性介護士の伊藤さんって方がいるんだけど、訪問介護先の70代の奥さんが光導の信者らしいのよ。脚が悪いから、買い物や光導への送迎をしていてね・・・・・・」  足が悪いおばあさんは、田中正子と言う名前で、老猫を飼っている。光導に行く時はその猫を連れていくのだが、じっとしていないので、介護の伊藤さんも光導の集会に付き添っていくらしい。  一人身の田中さんは話すことと言ったら、ほとんどが老猫の体調のことばかりなのだが、信者を導くはずの教祖の答えは、猫の身体に悪いことばかりを指示する。  さすがに心配になった伊藤さんが、あの教祖はおかしいのではないかと田中さんに問いかけると、普段は穏やかなおばあさんが激昂したので驚いたと玲香の父に話しているのを、玲香は聞いてしまったのだ。  尚季から電話をもらった後、玲香は伊藤さんに電話をかけ、様子を探りに行きたいので、伊藤さんからの紹介ということにしてもらってもよいかと尋ねると、田中さんの身を案じていた伊藤さんは、心良く承諾してくれた。
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