5月15日

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5月15日

月曜日。学校に行くのが嫌だと思ったのは、初めてだった。 同じクラスには、杉浦もいる。写真をネタに何をされるか分からないし、また痛いことや怖いことをされるかと思うと震えが止まらなくなった。 しかし、今日行かなければ隼人にますます心配をかけることは目に見えている。 それだけは駄目だ。これは俺の問題なんだから、彼に迷惑をかける訳にはいかない。 沈んだ気持ちで制服に腕を通し、リュックを背負ったところで、玄関のチャイムが鳴った。 こんな時間に誰だろう、と出てみると、 「よう」 隼人が立っていた。 「え、隼人、どうしたの?」 「どうしたじゃねーよ。とりあえず学校。行くぞ」 そう言って、勝手に歩き出す彼。 「わ、ま、待って!」 俺は慌てて靴を履いて、後を追った。 「なんで、俺ん家に?遠回りじゃん」 「お前がなんか様子おかしかったから、迎えにきてやったんだろ」 「え、そうなの、」 「感謝しろよ」 「・・・ありがとう」 教室に入ると、隅の方で友達とふざけていた杉浦と目が合った。 咄嗟に逸らして、隼人の影に隠れる。 「おはよう、木内くん」 「ひっ、あ、ごめ・・・お、おはよ・・・」 横を通り過ぎようとしたとき、突然声をかけられた。 明らかに怯える俺の反応を見て、隼人が眉をひそめる。 「なに?お前、陽になんかしたのか?」 「なんだ神崎、彼氏ヅラか?」 「ちげーよ。でもなんかコイツ怖がってんだろーが」 「気のせいじゃない?ね、木内くん?」 「え、う、うん」 「コイツを傷付けるようなことしたら、許さねー」 「しないよ、傷付けるようなことは、ね」 そう言った杉浦の、含みのある笑顔に寒気がした。 「木内くん、ハイこれ。借りてたノート」 「え・・・?」 ノート?そんなもの貸した覚えはない。 「またお前かよ杉浦。陽とそんなに仲良かったか?」 まさか・・・ 「最近ね、ちょっと仲良くなってさ」 恐る恐る、開いてみる。 「お前、陽を脅していいように使ってんじゃないだろうな、っておい陽、どうした?」 ああ、 「・・・」 ウソ、だろ 「陽?」 「え、ごめん、なに?」 「お前どうした?顔色最悪だぞ?」 「なんでもない。大丈夫」 「ほんとか?お前ん家の親、今日帰り遅い日だろ。俺ん家来るか?」 「ごめん、今日の放課後はちょっと予定があるんだ。先に帰ってて」 「・・・わかった」 渡された、見覚えのないノート。 最初のページを開いて、目に飛び込んできたのは。 "放課後、6階の用具室で" という文字。そして。 後ろに男のモノを咥えて、だらしなくよだれを垂らした、俺の写真。 どうしたらいいんだろう。こんなの、隼人に話せるわけない。 汚いと、軽蔑されたら。嫌われたら。 それは俺にとって、どんな暴力よりも恐ろしいことだった。 込み上げてくる吐き気を呑み込む。 「また、一緒に帰ろう」 そう言った俺の声は、表情は、震えていなかっただろうか。
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