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5月14日
軋む身体を引きずって家にたどり着き、どうしたのかと尋ねる家族の声も無視して、浴室へ向かった。
1秒でも早く、自分の身体に貼り付いた汚れを洗い流したかった。
シャワーを頭から浴びて、タオルで全身をこする。恐々と後孔に手を伸ばし、指で広げると、ナカからドロリとした液体が流れ落ちた。
「ぅう、え、おぇ、げ、、、」
自分が男に犯され、汚れてしまった事実をまざまざと感じて、胃の中身が逆流した。
「うっ、ひ、うぁ、あ、あぁぁ・・・」
涙が溢れた。汚い。身体中に貼り付いた、見えない汚れが落ちてくれない。
俺はもう、汚れてしまった。
「ぅ、はやと、はやと、、」
俺は泣きながら、隼人の名前を呼び続けた。
結局、眠れないまま夜が明けた。朝食も喉を通らず、心配する家族に適当に返事をして部屋に籠った。
昨日の夜から机の上に置いたままだったケータイを開くと、沢山の通知が届いていた。
すべて、隼人からだった。
"今日はサンキューな、また行こうぜー"
"そういえば、宣伝で流れた6月公開の推理もの、面白そうだったよな"
"今度は俺アレ観てーわ"
"陽も観たいって言ってたよな?公開されたら行かね?"
"陽?生きてるかー?"
"おーい"
やっとの思いで
"ごめん、大丈夫だよ"
とだけ送ると、すぐに返事が来た。
"心配かけんなよ、なんかあったのか?"
"ううん、疲れて寝てただけ。ごめん"
"そうか?なんかあったなら言えよ?聞いてやるから"
"ありがとう、隼人"
隼人の優しさに、また泣きそうになった。
でも、だめだ。その優しさに、頼ることはできない。
隼人にだけは嫌われたくないんだ。
「隼人、俺を、嫌いにならないで・・・」
俺は、汚いから。汚れてしまったから。
今度は俺のこの想いが、隼人を汚してしまいそうで。
俺は「好き」という感情を、必死に噛み殺した。
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