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5月10日
「おい陽、お前もっと食えよ。これからの季節、そんなんじゃブッ倒れるぞ?ほら、これ。」
ぶっきらぼうな言い方で俺にメロンパンを押し付けてくるのは、神崎 隼人。
彼とは、たまたま同じ作家が好きだったことをキッカケに仲良くなった。
「なぁ、その人の本、好きなの?」
「え、あ、うん。好き、だけど・・・」
「マジか、俺も好きなんだよ!あんた趣味いいな!」
「そ、そうなんだ、ありがとう」
「あー悪い、つい嬉しくてさ。名前、聞いてもいい?」
「あ、うん。2年の木内 陽です」
「陽か、俺は神崎 隼人な。なぁ陽、今度一緒にどっか行かね?あんたとは仲良くなれる気がするんだよ!」
「俺で、よければ・・・」
声をかけられる前から、隼人のことは知っていた。彼はその整った顔立ちと180㎝近くある身長で、入学当初から多くの人の注目を浴びていたからだ。
そんな人気者とおとなしそうな俺が仲良くしているのを見て、みんな最初は驚いてたなぁと、そんなことを考えていると、隼人に頬をつままれた。
「おい、聞いてんのか?メロンパン、食えよ」
「ごめんごめん、俺はお腹いっぱいだからいいよ。隼人食べて?」
「いま食えねーなら、とっとけ。お前のために買ってきたんだから」
「え、そうなの?じゃあそうする。ありがとう、隼人」
「おう」
隼人は、優しい。こんな風に、ぶっきらぼうなようで本当はまわりの人を気にかけている。
俺の体調が悪いときや、何か悩みがあるとき、誰よりも早く気付いて声をかけてくれるのも彼だ。
だからこそ、俺は怖い。
自分が抱いているこの気持ちに、彼が気付いてしまうことが。
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