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5月11日
「陽、今度の土曜日予定あるか?」
「え、ううん。無いけど」
「バイト休みなんだ。久々にどっか遊びに行かね?」
もちろん隼人の誘いを承諾し、映画を観に行く約束をした。最近バイトで忙しくしていたから、久しぶりに2人で出掛けられることが素直に嬉しかった。
土曜日の予定を手帳に書き込む俺と、横からそれを覗いている隼人。肩が触れそうな距離に、顔が熱くなる。慌てて離れた俺に、不思議そうな顔で
「どうした?」
なんて聞かれても、まさか本当のことを言えるわけがないので、
「なんでもないよ。ごめん」
と、笑って誤魔化す。
「そうか。いやー、しかし相変わらずお前キレイな字してるよな。俺お前の字好きだわ」
そんな些細なことでも、彼に言われるとすごく嬉しい。
「そうかな?ありがとう」
「ま、好きなのは字だけじゃないけどな」
「え?」
「いや、なんでもねぇ」
どういう意味だよ。そんな風に言われたら、期待しそうになるじゃないか。
「映画、楽しみだね」
前髪を整えるフリをして、再び熱くなった顔を隠した。
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