2 人魚について

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ところで君、人魚がどうして生まれるかという事について、考えて見たことは無い? 人魚はすべからく女の身体を持っているのだから(おや不思議そうな顔をするね、当然じゃないか)、人間のように交わりによって生まれるはずはない。 ではどうやって? 僕は、人魚というのは、死んだ女の幽霊ではないかと思うのさ。 それも、ただの女じゃないね。 恋に病んで身を投げた、哀れで美しい娘が、海の中で人魚になるのだ。 人魚となった娘は人間だった記憶を失くし、その悲恋だけをその身に(まと)わせて、人を狂わす唄を歌う… どうだい、悪くない想像だろう? 人魚というのは、生まれながらにして悲恋を運命づけられているという訳だね。 人魚姫の恋が報われてしまったら、そんな興醒めなことは無い…
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