1 雲龍の衣

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1 雲龍の衣

紺碧(こんぺき)の空に輝く太陽に恋い焦がれた月が、その逢瀬を遂げるとき。 夜の帳が一瞬にして、真昼の空を覆うとき。 それは、それらは、生を受ける。 陰と陽とが交わりを終えて、光を取り戻した頭上を見上げれば、人はそこに異様なモノを見ることになる。 雲ひとつなかったはずの天井を、何かが埋めている。 雲か? 否。 雲というには余りにもそれは、気高い純白を(まと)うている。 あれは、龍だ。 (おびただ)しい数の龍の赤子が、空を埋め尽くしているのだ。 しかしながら生まれたばかりの龍の赤子は、余りにも脆く、弱い。 互いにぶつかりあい、(もつ)れて、地上へ落ちてゆくその黄泉路(よみじ)の刹那、龍の赤子は純白の糸に姿を変える。
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