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「とりあえず、中に入りましょうか」
研究所はイスズの家でもあるので、一応、気を使ってこちらから提案してみる。
「そう、ですね」
他に選択しようがないのが本音だろうけど、とにもかくにも、イスズは鍵を開けた。
いつもなら一人になっても昼間の賑やかな余韻が残っているので居心地がいいのに、二人の方がかえって静かで落ち着かない。
「イスズさんの部屋はどちらですか」
なぜそんなことを聞くのかとびびったイスズは、ソレイユの顔つきを見て反省する。
「二階の室長室です。たぶん、所長室に毛布とかが用意してあると思いますけど、ソレイユさんはどうしますか」
こちらから聞き返すことができたのは、騎士としての確認だとわかったから。
「そうですね…………」
ソレイユはやけに長考した後、階段下でと答えた。
どういう経緯により階段下になったのかは不明ながら、その位置ならイスズも過剰に気にしなくて済みそうだ。
イスズとソレイユは一階の出入口の錠を全て確かめると二階に上がった。
ソレイユが先に立って安全を確認すると、メモ付きで所長室に用意されていた毛布を手にして言った。
「何かあったら、すぐに呼んでください」
「はい」
貴重な資料を保管している関係で、研究所の防犯はしっかりしているため、イスズはここにいる限り危険を感じたことはなかった。
それでも、ずっと一人で気を張っていたことを思えば、頼っても許される相手がいるのは何かが違うようだ。
「ソレイユさんも、少しは休んでくださいね」
「お気遣い、ありがとうございます。では、おやすみなさい」
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