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マネージャーさんに呼び出されて向かった野々宮君の部屋で、彼は一人ふてくされていた。友人関係と呼べるのかも謎な関係は、こうして高校卒業後も続いている。
彼の部屋で彼の代わりに家政婦じみた事をして宿題を代わりにやって、時々話を聞く、そんな関係が結局高校中ずっと続いた。
何故ぼくだったのかをたずねたことも無いし、彼の口から何かそういったものを聞いたことも無かった。
ただ、一度だけ週刊誌にネタを提供してやるつもりは無い様なことを聞いたことがあったから、女性を家に招くことが出来ないのだろうということは知っていた。
マネージャーさんとは時々顔を合わせて高2の途中でメールアドレスを交換した。
仕事でLineは使えないんだと言われ初めて、野々宮君ともメッセージアプリは使っていないことに気が付く。
でも、だからといってなにかある訳では無い。
あの日から何も変わらないままだ。
未成年なのに煙草を咥え、煙を吐きだしている野々宮君の体が心配だが、何か注意をしたことは無い。
ぼくがそんなことが出来る立場だとは思わないし、彼がそれを自分で選んでいるのならそれでよかった。
別にぼくは野々宮君が聖人君子だから好きな訳でもない。
それに、煙草を吸う野々宮君は文句なしに恰好良かった。
時々、多分本当に疲れ切った時にだけ野々宮君はぼくに話すけれどストレスもあるんだろうと思う。
だから、何かを言うつもりは無かった。
「ご飯作ろうか?」
「いい。」
普段外では饒舌な野々宮君は、ぼくの前でなのか家でなのかは知らないけれど、あまり話さない。
「お風呂入れてこようか?」
「いい。」
じゃあ、といいかけたところで、野々宮君が灰皿に吸いかけの煙草を押し付けて立ち上がる。
それから、ぼくの腕をおざなりに引っ張って、野々宮君の隣に座らせた。
「何もしなくていいから、ここに座っていろ。」
いいのだろうか。
多分今、テレビをつければ野々宮君の熱愛発覚!?のニュースがどこかのチャンネルで見れるだろう。
それなのに、友達かどうかも怪しいぼくが、今まで通り野々宮君の部屋にいていいのか、そんなことすら本人に聞けない。
結構泣いたつもりだったのに、マネージャーさんに呼ばれてのこのこと出てきて、何をやってるんだろう。
「……あれ、事実じゃないから。」
「あれ?」
「報道されてるやつ。」
熱愛報道が事実でないと聞いて、ほっとしてしまった。
野々宮君はバツが悪そうに視線をそらした。
そんなことは初めてだった。
週刊誌にネタを提供してやるつもりはないと昔言っていたから、その話なのだろうと思った。
「そうなんだ。」
それだけしか答えられなかったし、野々宮君はそれ以上その話はしなかった。
だけど、僕を座らせるために掴んだ腕は相変わらず離してはもらえず、ただ二人無言のまま過ごした。
何も会話は無かったけれど、この時間がずっと続きますようにと祈ってしまう位には相変わらずぼくは野々宮君のことが好きだった。
了
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