粒餡

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粒餡

デパ地下に漂う美味しそうな匂いにつられて、ついつい大判焼のお店に並んでしまった。 並ぶったって2、3人ほどだし、部活後の食欲には逆らえないよね。 思った通りスムーズに進んで、私の一つ前に並んでいたおじいちゃんが注文していた。なにやら店員さんに話しかけている。 「-この餡は粒餡かね?」 「はい、粒餡ですよ。」 「それなら2つ。」 「かしこまりました。…どうぞ。」 おじいちゃんが会計した後、私も2つ注文する。 ほかほかで美味しそう。 とりあえずデパートを出て、駅前のベンチに座って食べることにした。 駅前はよく待ち合わせに使われる場所で、そこには先ほどのおじいちゃんもほかのベンチに座っていた。 数分後、おばあちゃんがやってきておじいちゃんはベンチから立った。 「お待たせしました…あら?珍しいですね、大判焼だなんて。」 「お前が好きだろうと思ってな、確か粒餡好きだっただろう。」 「そうですけど…おじいさんは粒餡はお嫌いでしたよね。2つも買って…。」 「わしも食べる。」 「…え?」 「お前と食べるなら粒餡だってうまいに決まってるだろうが。」 「あら…ふふふ。おじいさんたら。ありがとうございます。」 「ふん、さっさと帰るぞ。」 そして去っていく素敵なご夫婦。 私はちょうど1つ食べ終わったところだった。袋の中にはあと1つ残っている。 欲張ってもう一つ食べるつもりだったけど…。
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