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エルフィムの話を聞いた5人は、改めてこの世界に自分たちが迷い込んできたことを話題にした。
「それはイグドラシルが再び、オークたちとの戦争が始まると予見したんじゃないかな・・・。千年前の戦争は、イグドラシルが巻き起こした戦争ではあったけど、今回、起こるかもしれない戦争はイグドラシルも知らない何かが関係している戦争なのかも・・・」
「何かって・・・。何が?」とミイラがいう。
「それよりも、私たちの世界に戻るにはどうすればいいのよ?その・・・、ビフィズス・・・」とキャラは口ごもった。
「それはヨーグルトに使うビフィズス菌のこと。ビフレストだろう・・・」とアニメが冷静に突っ込みを入れる。
「そんな所で突っ込まないでよ・・・。自分たちの世界に戻れなくてもいいの?」とキャラがいうと、アニメは冷静に他の5人の顔を眺めつつ、「ここにいる、俺たちの世界から来た俺たちは、誰一人として帰りたくないなんて思っていないさ。でも、今の現実に目を向けるならば・・・」
「アニメ!」とミイラが叫んだ。その顔にはそれ以上の事を言うなという思いの籠った視線を向けていた。
「あぁ・・・、エルフィム。腹が減ったなぁ・・・。何か食べるものはあるの?」とアニメがエルフィムに向き直って聞いた。
「私たちが食べるパンでよければ、人数分はあるが・・・?あとは、少しじかんがかかるが温かいスープも作れるぞ」といって、エルフィムは立ち上がってさきほどの入り口右側の部屋へ入っていった。
しばらくすると、エルフィムは木の皿に盛りつけた山盛りのパンをもってきた。脇には木の実のジャムが添えてある。
「エルフィムさん・・・。お願いがあるんだけど」とナースがエルフィムの傍に近づいて、何やらコソコソと耳打ちをしてい始めた。
「おぉ!なるほど。それはいい考えですね。早速、やってきます」とエルフィムが大喜びでさっきのトイレに入っていった。ナースはその姿を見て、少し安堵の溜息を吐いた。
「なに?彼女に耳打ちしていたの・・・」とミイラがナースの傍によって尋ねた。
「うん・・・?さっきのトイレだけど、私だってあんな気持ち悪い虫がいるトイレに入りたくないわ・・・。だから、エルフィムさんにお願いをしたの。外の外観をカモフラージュできるなら、魔法でトイレの虫たちを消して、ゆっくりと水が流れる小川の風景とかに出来ないかって・・・」とナースがトイレの方に視線を向けながらいった。
「なるほどね・・・。それなら、まだ、気持ちは変わるかな・・・」とミイラが納得した。
エルフィムがトイレの部屋から笑顔を見せながら出て来た。
「ナース。アナタのご希望通りにしてみたよ。ちょっと、見てくれる?」とエルフィムがいったので、ナースは笑顔を見せて「うん」と返事をしてトイレの部屋に入った。
「すごい」と感動している声が聞こえた。
その声に反応して、キャラも部屋の中へ入る。男性陣も続いて中に入ると、部屋の中は森の中へと風景が変わっていた。
トイレの便器はお粗末な木で造られた木製の便器ではあるが、その周りにはしっかりとした杭を打って固定されている。便器の周りには小さな小川が流れ、便器に座ると足首まで水に浸かる。しかも、その足が浸かる水は気持ちの良い冷たさであり、小川も水の流れる音が心地よさを感じさせる。
小川の両端は木漏れ日の射す森の中を映し出している。
「エルフ族が一番、落ち着く雰囲気をイメージしてみたけど・・・。人願はこういう雰囲気は嫌いか?」とエルフィムが後ろから尋ねて来た。
「いや・・・。人間もこういう雰囲気は好きだよ」とミイラが変わりの返事をする。
「よかった」とエルフィムが安堵のため息を吐いた。
「人間は寝る前にシャワーという水浴びをすると聞いている。準備はしてあるから入ればいい」とエルフィムが薦めてくれる。
「シャワー?」と5人が口をそろえて聞き返した。
「お前たちは・・・、入らないのか?」とエルフィムが不思議そうな表情を作って聞き返したので、チェックが「いや・・・。みんな、シャワーがあるという事に驚いたんだ。なぁ・・・、交代交代で浴びさせてもらおう」とみんなの意見を待たずに、チェックはまとめた。しかし、それについては誰も異議を唱える者はいなかった。
シャワーは女性陣二人が最初に浴びる事になった。一度に3人まで浴びれるというので、女性陣二人が最初に浴びて、続いて男性陣3人が入る事に。
エルフィムは魔法の服を着ているおかげで、しばらくはシャワーを浴びる必要が無いという。
シャワーを浴びた女性陣は、エルフィムの用意してくれたエルフ族の服を着た。その間、男性陣はシャワーを浴びている。
「このエルフ族の服って・・・、何だか不思議な素材を使っているの?」とキャラが質問した。
「特別な服かは知らないけど・・・、エルフはキヌムシから作った糸を草木を使って色染めをして、魔法の絹糸と一緒に編み込んだのがこの服だけど・・・」と説明をする。
エルフ族の服と説明されて着て見てはいるものの、今まで自分たちが着ていた服と何かが違うようだった。
ピンク色の刺繍の入った下着を着て、その上に青、赤と色の付いた厚手の服を着ているのに、着ているという感覚を感じられない。
女性のキャミソールでさえ、このエルフの服からすると厚手の服に感じられる。
「気持ちよかった」と男性陣が揃ってシャワーから出て来た。
そこで初めて、5人がそれぞれの素顔を確認した。
ミイラとナース。アニメとキャラはそれぞれお互いの顔を知ってはいるが、ミイラはチェックとナース以外の素顔を初めて見る。アニメとキャラもまた、チェック以外の二人の顔を初めて見た。
そこで改めて、5人は各々自己紹介を始めた。
ミイラは体格のよい、筋肉質な体をしている20代前半の若者だ。髪は真ん中から軽めに左右に分けている。
ナースは顔立ちの可愛い女の子で、肩までのセミロングの髪型をしている。体つきも華奢で、胸も小さい。
アニメはミイラよりも体格はよく、長身で筋肉質。何かスポーツをやっていた感じがしている。ミイラは武道をしていた筋肉の付き方に対して、アニメは陸上やバスケのような柔軟な筋肉をつけている。
キャラは少し大人びいた顔立ちで美人である。髪は肩から下までのロングヘアーである。こちらもアニメに負けないくらい長身である。胸もやや大きめで大人の雰囲気を感じさせる。
5人はそれぞれパートナーと一緒に夜を過ごす事にした。チェックとエルフィムは一人で部屋に入ると、まとまりのつかない一日を終えた。
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