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【始まり~出会い~】
舞台はアメリカ、ロサンゼルス。
この物語の主人公の名前はルーク・イナバ、17歳の高校3年生。
ルークはアメリカ人と日本人のハーフだ。
母親は女優のアニー・ミラー。
父親は昔モデルで活躍したタカシ・イナバ。
タカシが日本へ帰国する為モデルを辞め、その後再びアメリカへ戻り養成所で講師を勤めている時にアニーと出会い結婚した。
アニーが女優として成功したのはタカシの支えもあったからだった。
そして二人にはルークとその妹、リサが誕生した。
結婚した頃にアニーの父親トムをロスに呼んだが、トムは慣れ親しんだ土地を離れるのを惜しみ今もサンタイネスに暮らしている。
本屋は定年で退職し、今は畑仕事や趣味の釣りなどで余生を謳歌している。
車で2時間も掛からないのでアニー達はよく遊びに行っている。
ルークの通うハイスクールは昔、ケイトやケントも通っていたセレブやスターの子供が通う学校だ。
因みにケイトとブライアンの娘ミシェルもこのハイスクールに通っている。
ミシェルはルークの一つ下の16歳、高校2年生だ。
彼は母親の影響で小さい頃からショービジネスの世界に興味があった。
将来は俳優になるのが彼の夢だ。
180cmの父親譲りのスタイル、栗色の髪にブルーの瞳は母親譲り、端正な顔立ちだがまだどこかあどけなさが残っている。
妹のリサは13歳で、彼女はアニーの幼い頃にそっくりだ。
ーーー
「ねぇ、この詩ってステキよね」
ミシェルはルークに読んでいた詩集を渡した。
彼は目を通すと再び彼女に返した。
そして一つの詩を全て言葉に出して彼女に聞かせた。
「えっ⁈もう暗記したのっ‼︎」
彼は小さい頃から暗記するのは得意だった。
二人はよく学校の帰りにスタバでお茶をする今時の学生だ。
ミシェルの父親は世界的に有名なプロカメラマンのブライアン・スミス。
そして母親は大学教授のケイト・スミス。
ミシェルは頭は良いのだが、どちらかというと祖父のマイケルや父親のブライアンに似て芸術的な才能の方が際立っていた。
「ルークって付き合ってる女の子とかいないの?」
彼は唐突な質問に少し驚いた。
「えっ?...いないよ」
「...ということはルークってもしかして童貞?」
彼は飲んでいた物を噴き出しそうになった。
「...何言うんだよ...」
ルークは手の甲で口許を拭った。
「ふふっ、ごめん、そろそろ帰ろっか」
二人はスタバを出ると歩きながら話した。
「ミシェルはいるの?付き合ってるやつ」
「いないよ、恋愛とかあんまり興味ないから」
「ミシェルらしいな」
ルークは小さく笑った。
彼は捨てようと思えばいつでも童貞を捨てられた。
今まで何人もの女の子から告白されてきたが、その度に断わっていた。
ルークには誰にも話せない秘密があった...
彼は一度も女性を好きになった事がなかった。
自分が初めて女性に興味がないのが分かったのは15歳の時だった。
友達と一緒にポルノ雑誌を見たことがあった。
彼は雑誌を見たが全く興奮しないし、下腹部が反応することもなかった...
寧ろ、雑誌を見て興奮している友達を見ている方がルークには刺激があった。
その時に自分の恋愛対象は女性ではなく男性にあることに気が付いた。
同性愛者は決して珍しくはない世の中になった、実際に正式に結婚もできるし自分が同性愛者だとカミングアウトする芸能人も増えてきた。
しかし彼は誰にも言えずに、そして好きな人が出来ても最初から諦めていた...
「リサ、宿題は終わったの?」
アニーが食事の後片付けをしながらリビングでテレビを観ていたリサに話し掛けた。
イナバ家は基本的にお手伝いを雇っていない、アニーは仕事がオフの日は家事をこなし、仕事で留守にする時はタカシが家の事をしている。
お互い仕事の時だけお手伝いを雇っている。
「今日はなかったよ」
「アニー、後はわたしがやろう、君はリサとルークとテレビでも観てなさい」
そう言うとタカシはソファーを離れダイニングへ移動した。
「もう終わるから大丈夫よ」
アニーはタカシの頬に軽くキスをした。
「リサ、本当に宿題はなかったのか?」
隣に座っていたルークが話し掛けた。
「あったよ、後でやろうと思って」
彼女は小さく舌を出して笑った。
ルークは笑いながら冗談っぽく
「この悪いやつめ」と言うとリサのおでこを指で軽く突いた。
「ルーク、この前も話したけど来年から養成所へ通うことは賛成だけどちゃんと大学にも行くのが条件よ」
「分かってるよ、ママ」
「ルーク、明日学校が終わったら養成所に見学に来るといい」
タカシは講師を退任する時に所長から後任を任され、今は彼が所長を勤めている。
「リサも行きたい‼︎」
「リサは明日、ママと歯医者さんでしょ〜」
アニーがリサに頬擦りをした。
「歯医者さん行きたくない...」
「ちゃんと歯医者に行ったらパパが週末、遊園地に連れてってあげるぞ」
「えっ⁈本当‼︎リサ頑張る」
タカシは遅くに授かった娘のリサに甘かった。
ーーー
次の日ルークは学校帰りに養成所のビルに寄った。
ロスの中心地にある高層ビルの中に養成所はあった。
ビルの1/3のフロアが養成所で占めていた。
彼は1階の受付で用件を伝えると、受付の女性が暫くお待ち下さいと彼に話した。
暫くすると一人の男性がやって来た...
「君が所長の息子さんのルークかい?」
「...はい」
目の前の男性は爽やかな笑顔を見せた。
180cmのルークより少し高い身長にダークブラウンの髪にヘーゼル色の瞳、彼はとても綺麗な顔立ちをしていた。
ルークは少し胸が高鳴った...
「僕はカイル、所長から君が来たら養成所の中を案内して欲しいと頼まれたんだ」
「そうなんですか‼︎それじゃあ、よろしくお願いします」
「ははっ、もっと楽に話してよ」
カイルの笑顔に彼は再び胸が高鳴った...
二人はエレベーターで移動した。
「カイルさんはここの生徒なの?」
「そうだよ、演劇科に通ってるんだ..将来は映画俳優になるのが僕の夢なんだ」
「ボクは舞台俳優になりたくて来年からこの養成所に通うんです」
「君が来るの楽しみだよ」
ルークは自分の顔が赤くなっていないか少し不安だった。
二人はエレベーターを降りた。
ーーー
各フロアをカイルが説明しながら案内し、一通り案内が終わると、
「ルーク、時間があるならここのカフェテリアで少しお茶してかない?僕は今日の授業終わってるから後は帰るだけなんだ」と彼を誘った。
ルークは少し驚いたが、内心嬉しかった。
二人は養成所の中のカフェテリアでお茶をした。
「ルークは17歳なんだ..僕は19だよ」
カイルは一人暮らしをしながら、養成所とバイトを掛け持ちしている。
「..カイルさんすごいなぁ、それに比べてボクなんて」
「ううん、親に大反対されたんだ..大学へは行かずに家を出て、...だから僕の意地でもあるんだ」
カイルは小さく笑顔を見せた。
彼の透き通るような瞳にルークは吸い込まれそうになった...
少し目を合わせただけなのにその時間はとても長く感じられた。
二人は帰り際に連絡先を交換して別れた。
そしてルークが帰り道を歩いていると、横にプリウスが並走するようにやって来た。
「ルーク、良かったら家まで送ってくわよ」
それはケイトだった。
彼は車の助手席に乗ると彼女は車を発進させた。
「仕事終わって帰ってたらちょうど貴方が見えて」
ルークは養成所へ見学に行った事を話した。
「そう、来年から養成所へ通うのね、やっぱり血は争えないわね」
「ママは最初、反対してたんです..でも大学行く事を条件で養成所もOKしてくれて」
「親はいつでも子供の為を思ってるから..ミシェルは難しい年頃ね、彼女の為を思って言っている事もミシェルには口煩く聞こえるみたい」
ケイトは苦笑いをした。
「ボクもそういうのあったけど、ミシェルもいつか分かってくれる時が来ますよ..親の有り難さが」
「ありがとう、ルーク...そういえば貴方、好きな子とか付き合ってる子いるの?」
ルークは一瞬、カイルの顔が頭に浮かんだ..
「..ちょっと気になる人はいます」
「そう、...いつまでも強く心の奥に残ってる忘れられない恋愛って若いルークにはまだ分からないわね、..可笑しな事言ってごめんなさい」
彼はケイトが少し何かに悩んでいるように見えたが数十分前に別れたカイルの事が頭に焼き付き、気持ちはそちらへ流れていた..
ーーーその夜
ルークはシャワーを浴び、自分の部屋へ戻るとベッドに横になった。
相変わらず彼が思うのは今日会ったカイルの事ばかりだった。
それは久しぶりに抱いた恋心だった...
そしてそれも今までで一番強いかもしれない。
しかし今回も諦めなければいけないと思うとそれだけで気持ちが張り裂けそうだった。
どうしてこんな思いをしなければいけないのか、普通に女性を好きになれたら少なくとも、ここまで苦しい思いをせずに済んだのに...
彼はいつも人を好きになる度に呪文のように唱えていた。
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