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残滓の傍観者
「ねぇ~、 」
――何? ちゃん
遠い日のようなそうでもないようなそんな日常
肝心のところがノイズが走っているのか聞き取れない
どうやら男女が一緒に帰っている日のよう
「あんまり自分のこと主張しないけど大丈夫なの?やっぱり流されてない?」
――そうかな?
そんな風に男は笑う。しかし、相手の顔は不機嫌そうだ。
どうやら真面目な話らしい。
――そんなに自己主張が少ないのかな?これでも主張しているほうだと思うけど
「それでも主張しているって言い張るんだ」
この答えが気に入らなかったみたい。さらに不機嫌になっていく。これは一体なんだろう?自分ではない誰かの記憶を見ているのだろうか。
「もっと のこと知りたいのに、なんでそうも自分を隠すの!?考えられない!」
ズカズカ先を歩いていく女。先が見えてないのかこのままだと恐ろしいことになる!
――え、あ、ちょっと!?前!前!
男が焦って女を止める
「何!今更!ほかっておい・・・!?」
信号無視による事故の余波が飛んできた。その時、女を強引に引き戻し勢いで男がその場に変わる。
「あっ・・・!」
男が余波で飛ばされた瞬間目の前が真っ暗になった。
気が付いたら次は病院の一室に変わっていた。さっきの女が身代わりになった男のベットで泣いている。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
自分の不注意のせいで男が重症を負ってしまったことに責任を感じている。すると目が覚めた男が弱弱しい声を発する。
――よかった・・・無事だったんだね・・・
「 !」
――君の無事を確・・・認で・・・きて・・・よか・・・た・・・
その声を最後に室内で不穏な音が鳴り響く。音に伴って視界が黒く染まっていく。
「やだ・・・やだよ・・・もっと知りたいのに!いなくならないでよおおおお!!!」
夢だったのか?ただ女の無事が確認できたらほっとした自分がいた。
しかし、誰だったのだろう?
――おにいさんこちらへおいで。声のするほうにおいで。
誰か語りかけてくる。目の前は真っ暗闇。
――ふふふ、そうそう。こっちこっち・・・
よくわからないが呼ばれている。感覚は無いがなんとなく声のする方向に動いてみる。小さな声がだんだんを大きく聞こえる気がする。それと同じぐらいに周りが明るくなっていく。少しずつ輪郭が浮かび上がる。同時に自分の体の感覚が現れた。どういう原理だかわからないがこの先に向かうとなにかあるのだろう。
――そうそう!その光に向かっていってね・・・お に い さ ん
なにがなんだかわからないがその通りに進んでいくことにする。ふと、なぜ自分なんだろうかと・・・疑問に感じながら。
とある青年を誘導した声の主は後姿を見て細く笑っていた。
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