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第2話 朝礼
「はぁ……なっ、なんとか間に合った」
時計を見ると、チャイムの五分前になんとか滑り込むことが出来た。ここまで遅刻ギリギリに登校したのは久しぶりだ。
「おーっす、今日はギッリギリだったな」
ニヤニヤしている様に見えてしまう表情が非常にムカつくが、こいつは元々こういう表情なのだから仕方がない。
「はぁ……」
「どっ、どうしたんだよ。ため息なんかついて」
それに、チャイムが鳴ってすぐに先生が来るわけではない。大体十分くらいの間がある。
「仕方ねぇだろ、探しモノしてたんだから」
「探しモノ? なんだよその探しモノって」
「はぁ……ほら、一週間前に期末テストあっただろ」
「あったな……でも、もう返却されているんんだから特に問題はないだろ?」
こいつの言う通り確かに『普通』であれば、テストが終了し、後日本人にテストを返却……その後にテストを捨てようが燃やそうが何も問題はない。
そう……普通であれば。
「まぁ、あの『教科』のテストでなければ何も……って、おい」
「ああ……失くしちまったんだよ。しかも『あの教科』で」
机に突っ伏している俺に対しそいつは「それは気の毒に……」という憐みの表情を向けた。
「つーか、その教科落としたらやべぇんじゃねぇの? こう言っちゃアレだけどよ、それ以外の……特に主要五科目なんて基本赤点だろ?」
「そうだよ、やべぇんだよ。このままじゃ点数足りなくて留年だよ」
もはや自暴自棄である。諦めているわけではないが、どうしてもコレで『テスト』が見つからなくて『留年』なんてなったら……というおっかない最悪の状況を考えてしまう。
もし、そんな事になったら……と思うと同時に、母さんが鬼に変わっている姿が目に浮かぶ。
「やっぱあれじゃね? 副教科だけじゃなくて主要五科目もちゃんとやれっていうお達しじゃね?」
「そんなお達し、今欲しい訳じゃねぇ」
「お前『家庭科』のテストだけはいいもんな。今回も百点か?」
「ああ」
実は俺の通っている高校は基本的に『授業』と『ノート』の『日頃の学習態度』が成績の半分を占める。
そして、もう半分は『テスト』なのだが……基本的にそのテストは『合計点』で出されるのだ。
最終的に『中間』と『期末』の成績すべてを合計して出して、留年や進級が決まる……というシステムになっているらしい。
つまり、いくら『授業態度』が悪くても『テスト』で挽回も出来るし、他の『教科』の成績が多少悪くても挽回出来る『教科』があればそこまで成績に影響は出ない。
ただ『家庭科』とか『体育』とかのテストは基本的に『期末』にしかなく、俺としてはそこが勝負どころなのだ。
「ただいくら百点で直しがなくても手元にないってなると……」
「お前のテスト成績、家庭科の部分は零点だな」
そう、厄介なことにこの『家庭科』では、いくら百点を取っていようが『再提出』をしなければならない。
もちろん、直しがあるのであればきちんと直さなければならないし、直しがなくても『再提出』は必須だ。
もし、それをしなければ……こいつの言う通り家庭科の『テスト』は零点扱いになってしまう。
基本的に授業中は寝ていて宿題は丸写し。
テストは『国語』とか『主要五科目』と言われている『教科』は赤点がほとんどだから『中間テスト』の成績は下の下である。
そんな中で俺が唯一百点の取れる『救世主』が、副教科なんだけど……。
「とりあえず、休み時間とか使って机とかロッカーを見ることだね」
「ああ……気が重いけどな」
「それはいつももらったら適当に入れっぱなしにしているからだろ。コレを機会にきちんと片付けろ」
「はぁ」
「ため息つかない」
「うーっす」
こうして、授業の合間の休み時間を使ってプリントやら教科書やらを無理やり突っ込み、グチャグチャになっている机やロッカーを捜索した。
いや……本当に、整理整頓って大事なんだな。
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