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今村とは意外にも共通点が多いようだ。
「もう使い方もバッチリだね」
「はい、でも本当にお借りしても大丈夫ですか?」
「いいよ、後で送るよ。あ、ほら見て、さっきより薄くなった気がするよ」
律香はハッと空を見上げた。
虹はまだ原型をとどめているものの、確かに薄くなっている。
律香は少し慌て気味に今村のスマホで写真を数枚撮って彼に返す。
その後、彼も同じように写真を撮ったのだが、驚くことを口にした。
「あのさ、虹をバックに皆月さんを撮ってもいい?」
「……え、私ですか!?いや、私なんて写真に残すようなものではないですよ!」
律香はそう答えたが、「俺にとっては皆月さんに勝るものはないよ」とビックリするぐらい甘いことを言う。
頬が熱くなるのを感じる。
きっと今村には赤い顔がバレバレに違いない。
「恥ずかしいです……」
さすがに一人でポーズを撮って写真に映るほど、自分に自信なんてない。
律香は自分が地味だと理解している。
航は清楚で綺麗と時々言ってくれていたけれど、航以外にきちんと告白されたことはない。
目の前の彼を除いては……。
それに航の婚約者は、律香と違い華やかな女性だった。
もしかすると彼は、二番目になれそうな律香をいい気にさせていただけかもしれないのだ。
「うーん、そっか……それならさ、一緒に映るのはどう?」
「え……?」
すると次の瞬間、今村は軽く律香の肩を抱いて彼に引き寄せると、スマホをやや上にかざした。
画面に二人の顔が収まることが、なんだか気恥ずかしい。
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