始まりと終わりと

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 それなのに、航はさらに律香を口説くのだ。 「もう一度言わせて。俺と付き合ってください」  生真面目な顔をして改まった口調で。 からかっているように聞こえなくて困ってしまう。 「皆月さんが好きなんだ。俺のことを嫌いじゃなければ付き合って欲しい」  この時の律香は、彼の熱意と雰囲気にあてられていたのだと思う。 断われなくて首を縦に振ってしまったのだ。 航の魅力に心はしっかり捕らわれてしまっていた。 後になれば、浅はかだったと思えるのに――。 「本当に……?」 「え、あ……」  それでも改めて確認されると戸惑ってしまう。 これほど簡単に頷いてしまったことを恥ずかしく感じると共に、簡単な女だと呆れられたかもしれないと慌てた。 しかし、それはすぐにどうでもよくなってしまう。 なぜなら突然握られていた手を引かれ、航にギュッと抱き締められたからだ。
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