始まりと終わりと

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 航はベッドまで軽々と律香を運ぶ。 華奢に見えるが彼の腕は明らかに律香より逞しくドキドキした。 「横になろうか」    ゆっくりと丁寧に体を寝かせられる。 とても大切に扱われているようでくらくらするほど嬉しい。 「律香、平気?」  視界の中が航でいっぱいになる。 急激に距離が近付いたのだ。 お互いの吐息がかかるほどの近い距離に驚くが、驚いたのはそれだけではない。 「名前……?」  律香と名前で呼ばれたことに、ハッとした。 つい今まで、苗字で呼ばれていたというのに。 「律香って呼んじゃダメかな……?」    お堅い律香にとって異性を名前で呼ぶことは、簡単ではない。 気持ちの距離までぐんと近付いた気がする。 恋人になった航のはじめての願い事に、律香の心はときめきを覚えた。 「何も言わないならOKって取るね?」  航は魅惑的な笑みを浮かべる。 永遠に観ていたいと思えるくらい素敵に映った。 「……先生」 「航でいいよ」  航は手でゆっくりと律香の前髪を横に流す。 冷たい彼の手が火照る額に当たって気持ちがいい。
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