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「律香に名前で呼ばれたら嬉しいな」
額を撫でていた航の手は、徐々に下りて唇までたどり着く。
「呼んでみて?」
航は親指で唇をなぞりながら微笑んだ。
胸がキュンとときめいてしまう。
「せ、先生……」
とても“航”とは言えなくて普段通りに呼ぶと、彼は面白くないというように、顔を少ししかめてみせた。
「俺は律香の先生じゃないよ?」
航は二本の指で律香の唇を左右からむぎゅっと中心に寄せると、顔を近付けてきた。
キスをされる!と思っったので、目を閉じる。
すると彼は、尖った先の唇をペロッと舐めたのだ、
「ひゃ……!」
驚いて目をハッと開けると、イタズラを成功させた子供のような愉快な笑みを浮かべた航と目が合う。
「呼んでくれないともっかいするよ?」
先ほどは不意打ちだからよかったものの、宣言をされると別である。
心臓が持たないと思ったので、「わ、航……君……」と小声で言った。
しかし航はというと、呼んでと言ったのに少しの間無言でいたので、からかわれたのでは……と不安になった。
「よく言えたね、ご褒美」
しかしそれは、航にキスをされたことで、瞬時どこかへ吹き飛んでしまう。
「律香の唇は柔らかくて好きだな。もっとキスしていい?」
律香を見つめる彼の目が色っぽい。
真っ直ぐな視線に、律香を心から求めているように感じられた。
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