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結局、律香は航に流されるように関係を持った。
事後に隣に素肌で寝転ぶ航を見て、大胆な自分に動揺してしまう。
腕枕をしながら律香の前髪を優しい手つきで撫でる航の顔を見ることができない。
「初めてだったんだね」
「はい。縁もないけれど、モテなかったので……すみません」
律香はタオルケットに顔半分を隠す。
昨日までの自分は艶事とは無縁だったのに、こんなことになるとは想像もしていなかった。
航のことは素敵だと思っていたが、恋焦がれていたわけではない。
でも女性扱いされた喜びから付き合い、初日に体を繋げてしまったのだ。
少し酔っていたとはいえ簡単に体を許してしまうなんて、これほど自分が軽い女だとは思ってもいなかった。
こんな形ではじめてを迎えるなんて思わなかったので、急展開に感情が追いつかず、今さらだがよかったのかと妙な心地で落ち着かない。
「どうして謝るの?俺は嬉しいけど」
航は嬉しそうに笑うけど、律香は何と返答してよいのかわからず黙る。
「すごく可愛かったし」
初めての体験は、何が何だかわからぬまま進んでいった。
キスをされるのは心地よかったけれど、あちこち触られるのも体を繋げた時も、正直なところ快感などはなく、痛みを伴い苦しかったので、とても可愛い姿を見せていた気がしない。
それに彼はどこか性急で、拒むことが難しかった。
特別に初めてを大切にしていたわけではないが、複雑な心境だ。
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