始まりと終わりと

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 航との夜から五日。 航からの連絡は一切ない。 律香はそのことに密かにモヤモヤとした感情を抱いていた。 航とは同じ場所に勤めているが、そこでも彼との接触はない。  律香の勤める今村病院は様々な科が入っている大きな総合病院である。 それだけスタッフが多いので、航と顔を合わせる頻度は少ないものの、一日に一回くらいはすれ違っていた気がするが、体を重ねた日以降会っていないのだ。 彼がいつ接触してくるかわからないので、そわそわする毎日。    航とどんな顔をして話せばよいのか、周囲の人に察されないかなどと、緊張から胸をドキドキと揺らすも、さっぱりなのである。 (どうして連絡をくれないの?もしかすると私がはじめてだったから嫌になっていたりして……)  戸惑いばかりだったのは初日だけで、徐々に航を意識し始める律香。 体を重ねたことで、純粋な心は簡単に奪われてしまっていた。 連絡が来ない日々が続くとより不安が募っていく。 体をさらけだした分、深い関係になったと思っているが、航は違ったのだろうか。  そもそもの始まりは、落とし物をした時である。 もし落とし物をしていなければ、あの夜はなかったかもしれない。 (遊ばれた?ううん、彼は連絡すると言ってくれたもの……)  今の律香は、スマホを確認する回数が異常に多く、院内でも彼の姿を探してしまう。 そんな自分が嫌になるが、心は止められない。
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