始まりと終わりと

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「航君……」 (お待たせだなんて、彼と待ち合わせをしていたかしら……?)  律香がそう考えてしまうのは自然なことだ。 なぜなら目の前にいる柏木航(かしわぎわたる)は律香の恋人なのだから。  律香がどうしてここに?と問いかけようと立ち上がり、彼と向き合う。 すると航は焦ったような様子で「やぁ」とよそよそしく言い、足を一歩後退させた。 (どうして……?)  その理由はすぐにわかることとなる。 「わーくん!」  先ほどぶつかった女性が突然前に来て、航の腕をギュッと掴んだのだ。 律香は衝撃で目を大きく見開く。 「もう、遅い!すーっごく待ったんだから!」 「……ごめん、(あおい)」 「ダメ、美味しいランチ奢ってくれないと許さないから!」 「はいはい」 (航は双子だった?)  航が一人っ子であることは知っているのに、そんなことを思ってしまうくらい目の前の光景が理解できない。
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