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おそらく律香へのメッセージが書かれているに違いないと察して、胸元にパスケースを当て隠す。
「皆月さんのものでよかった」
航は無邪気な笑顔を乗せる。
なんだかイタズラが成功した子供みたいで可愛い。
「ありがとうございました」
なんだかこちらまで楽しい気分になってくる。
航は「じゃあ、仕事頑張ってね」と去っていく。
その後ろ姿を見送った後、デスクに戻った。
先ほどまで律香を見ていた周囲の者は、すっかり興味を失ったようで仕事に集中している。
しかし今村だけは律香に視線を向けていて、気まずく思い目線を落とした。
次に航と二人きりで会ったのは翌週の日曜日。
こっそり渡されたメッセージは、デートの誘いだった。
スマホで簡単に連絡を取り合えるのに、あえて文字されて、さらに出会いのシーンを演出した航のイタズラなところに律香の心はときめきを感じた。
待ち望んでいた航からの連絡に、落ち着かない心は安定してデートの日を待ち遠しく感じていたこの数日間。
律香の恋心は徐々に膨らんでいく。
これまで鳴らなかったスマホにしても、デートの返事を送ったことをきっかけに毎日メッセージを送り合うようになった。
まだどこか夢のような感じであったものの、ようやく航との恋が走りはじめたような感じがしていた。
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