走り出した恋

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 航の住まいは立地のよいエリアに建つ高層マンションの上階で、まだ築二年と新しい1LDKの縦長の部屋だった。 さすがは大病院に勤務する医師である。 律香では絶対に手が出せない。    室内はというと、家具についてはベッドと小さなテーブルしかなく生活感をあまり感じられない。 キッチンも一度も使用したことがないのでは?と疑うくらいに調理器具などなく、驚いてしまう。 航は料理ができないようで、食事は毎日外食かテイクアウトですませているようだ。 冷蔵庫以外の家電がないので、次のデートは電機屋に行こうと約束をする。 そのことに、次回もあるのだと簡単に喜んでしまうのだ。  その夜は、近くのスーパーで食材と一緒にフライパンや小鍋などを購入し、律香が夕食を作ることになった。 あまり出歩かない律香は、家事が得意な方。 ナポリタンに大根サラダにオニオンスープを作ると、航は手際いいねと褒めてくれるので、気分がよい。 さらにそれらを口にした航は、「何これ、めっちゃ旨い!律香料理上手なんだね」と顔を笑顔でいっぱいにして絶賛する。 「家庭的でますます好きになるよ」  そう言われてしまえば、律香の胸は簡単にときめくわけで。 また一つ航を好きになるのを感じる。
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