4474人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも律香はしばらく無言のままでいた。
すると航は辛抱しきれなくなったのか「俺のこと少しも男として見れないかな?」と尋ねた。
「……いえ、そんなことはないです」
それは嘘ではない。
航からの告白にはかなり戸惑っているけれど、律香にとって今夜の彼との時間は、心が躍りときめきを感じ夢のようだった。
正直にいうと男として彼を意識した。
「じゃあ期待してもいいのかな?」
律香の様子から航は自信を得たように表情を和らげた。
困ってしまい目を伏せて、再び無言になってしまう律香。
すると航は次の瞬間、律香の手を取りお互いの指と指を絡ませてきた。
体が戸惑いからビクッと震える。
「な、何を……?」
目を瞬き彼をハッと見つめた。
「こっち見て欲しかったから。こうしたら俺を見てくれるでしょう?」
航の表情がくらくらするほど色っぽく映り、頬がカァッと熱を持つ。
男慣れしていない律香は易々と踏み込まれてしまう。
なんて単純なのだろうか。
「あの、本当に私が……」
「ん?」
「……好きなんですか?」
自分から口にすることさえ恥ずかしい。
声が震えている。
「大好きだよ」
航の目は真っ直ぐな律香を見つめていて、心が捕らえられる。
もう抗えそうになかった。
最初のコメントを投稿しよう!