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失恋桜
春の風がそよそよと吹く、穏やかな休日の午後のこと。
学生時代は美術部だった律香は25歳になった今でも絵が好きで、一人で美術館に訪れていた。
ゆっくりじっくり絵画を堪能し、休憩しようと館内に併設されたカフェへ入ろうとした時だ。
美術館に少々適さない派手な格好をした女性とぶつかった。
まだ少し肌寒い季節だが、五分袖のピタリとした真っ白のトップスにサーモンピンクのタイトな短いスカート。
それからブランドバッグにブランドの靴を履いていた。
「すみません」と、謝った律香の後ろから「お待たせ」と、声がしてハッとし振り返った。
もしかすると、どこかで聞いた声だと思ったのかもしれない。
そこには、よく知る人物が立っていた。
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