アナベルの約束

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 律香は普段“今村総合病院前”のバス停から、バスを使って帰宅する。  だけど今夜は夜道を歩きたい気分で、律香は次、もしくはその次のバス停を目指すつもりでゆっくり歩きはじめた。 「皆月さん」  それは、病院の敷地内を出てすぐだった。     後ろから事務長に呼び止められて、律香は足を止めた。  事務長は今日は老人ホームやデイケアサービスといった今村病院が別に営んでいる施設に足を運んでいたため、朝から不在だった。  事務長は高圧的な態度を取るような上司ではないので、彼が不在で仕事がやりやすいなんてことは特にない。  だけど、今日の律香は事務長と顔を合わさずにいられることに、ホッとしていた。   なんせ熱い告白をされた後だ、普通に仕事ができる気がしなかった。   「……事務長……お疲れさまです」  律香の顔は緊張でカチッと引き締まる。 「お疲れさま。 よかった……皆月さんに会えて」  事務長は固くなった律香に対し、柔らかな笑顔を浮かべた。
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