失恋桜

8/8
2776人が本棚に入れています
本棚に追加
/8
 生温かさとベロっとした感触に驚いた律香は、一瞬で意識がしっかりした気がした。 (舐められた……?)  律香の目は大きく見開き、パチパチと忙しなく動く。 「驚かせちゃったね」  航は色っぽい笑みを浮かべたかと思うと、律香の唇を親指でゆっくりとなぞった。  その動きは体の芯をカッと熱くさせる。  律香はこれまで感じたことのない感覚に戸惑い、太股と太股もぐっと閉じた。 「でも今日、ずっと皆月さんとキスしたいって思ってたんだ」 「……キ、キスって……」    律香の声はひどく掠れていて、今水を飲んだばかりだとは思えないほどだ。 「皆月さんが好きなんだ」  これは夢だろうかと律香は思った。  しばらく時間が止まったかのように周囲の音が消えて、また航以外のものがぼやけて見える。   「俺と付き合ってもらえないかな?」 「つ、付き合って……え……」 「交際してほしいってことだよ」  航は口の端をいっぱいに上げる。 「嫌?」 「……」  律香の胸の鼓動は、はちきれそうなほどうるさく音を立てている。  きっと航にも聞こえているだろう。  目の前の彼は口の端を緩やかに上げ、律香の答えを待っているのがわかる。    
/8

最初のコメントを投稿しよう!