一章

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一章

「あの……来週の日曜日、お出掛けしてきても大丈夫ですか?」 夕飯の味噌汁を啜る俺の前で、妻が遠慮がちに尋ねてくる。その日は俺自身も休日だ。 「ん? あぁ、どうしたんだ」 「綺羅(きら)さんに誘われたの」 妻がはにかみがちに答える。あまり同世代の友人がいない彼女は、俺の部下でもある綺羅さん、もとい鑑田(かがみだ)綺羅とは親友と言っていいくらい仲が良い。 「好きにするといい」 あまり愛妻家のつもりはないのだが、彼女に何かねだられると俺は大抵聞いてしまう癖がある。多分どれだけ普段仕事で帰りが遅くなろうが、家庭のことは任せきりにしていようが文句を言われないのが、我ながら後ろめたいのだろう。
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