三章

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三章

壁の時計が正午を指した。 「昼食にするか」 「ちゅうしょく?」 鉛筆を握りしめていた澄生が首を傾げる。熟語はまだあまりわからないらしい。 「昼ご飯だ」 俺は机の上に置いてあった鍋の中のチキンライスを皿によそう。隣にいつもはしまってある電子レンジの取り扱い説明書が置いてあった。妻は俺を何だと思っているのだろうか。 俺は説明書をキャビネットに片付け、適当にチキンライスを温める。 「とうさま、でんしレンジつかえるの?」 そんなに難しそうに見えるのか、電子レンジの操作が。 「……電子レンジというものは、誰でも簡単に使えるようにできているんだ」 「おれもつかえる?」 失言だった。自分の背丈より高い位置にある上、取り出す際に火傷の恐れのある電子レンジを使わせるのは良くない。 「……これを使うにはな、これのてっぺんに手が届くようになるくらい、大きくならないといけないんだ。お前はまだ小さいからお母さんか俺にお願いしなさい」 澄生が少し不貞腐れたように下を向いた。 「……うん」 「……俺もお前くらいの頃は届いてなかったから、悔しがることはない」 「ほんと?」 本当は憶えていないが多分そうだろう。 「まぁ、本当だ」
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