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その足で桜の名所に向かった。
満開の時期だと臨時の駐車場ができ、それらに入りきれない車が道路に並ぶほどになる古城。
人込みは苦手だ。
だから、人が減ってから行く。
テレビでは桜のニュースは北に行き、この周辺の人たちは桜に興味がなくなるようで、公園内にある駐車場でもガラガラになっていた。
車庫入れが苦手な私でも停められるスペースがあることが大事。
車を停め、階段を上って桜が咲いている広場に向かった。
階段を上りきり、少し急な坂がある。その途中で桜が舞っていた。
でも緑が多い。緑がたくさん植わっている公園で、坂にはたまに桜の木がある。
石垣が流行る前の山城。
城には石垣があるものと思い込んでしまった現代の人たちが、広場までの道を石で作ってしまったそうだ。
以前、ここで説明をしてくれた先生が、苦笑いをしながら教えてくれた。
それでも、当時の様子がかなり残されている城らしい。
私が興味を持ったのは、城の大事な場所を守る「犬走」と呼ばれる道。坂を上りきった広場の部分(お殿様がいるはずであろう部分)をぐるっと回れるようになっている。
曲者が来ないように監視するためにあったとか。
その話を聞いた後、私はひとりで犬走に向かった。
正規のルートから外れた、誰もいない、使われてもいそうにない道。
舗装されていなくて、樹木に囲まれた土の道だった。枯れ葉がつもりつつも踏み固められ、いまだに道として残っていた。
途中で道は崩れ、進めなくなる。でも、残った部分から城の上部を囲っているのがわかる。そこで山肌を眺めていると、城を守りたいという想いが、何百年もの時を超え、道として形を残しているように思えた。
なんだかワクワクしてしまった。
これを作ったひとたちの呼吸が感じられそうで。
しかし、犬走には入れなくなっていた。
入り口に、ネットがこれでもかとかかっていた。
危ないといえば、危ない感じだった。
でも、そこが良かった。
だから入れなくなったのだろうけれど。
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